デニム・ブルーママン22の3

 

私は男性の性格にしぶとい一面があることに閉口します。家には行きたくない…上手く断ったのですが、やんわりが通じない。私はひとつだけ、手段があるとすれば、これしかないと観念します。家に一回だけ寄って、この実績を盾に永遠に断る方策でした。私は、白黒はっきりしている人間でウヤムヤが大キライ。好奇心はしかし、歴然としてあったのです。一歳上のお姉さんは出戻りで、ミチは未婚…まだまだ秘密はありそうでした。第一、彼はなぜ、離婚をしたのか?そこんとこを知りたいとする自分は確かにいた…しかし、危険水域だと、みずからを律する姿勢であくまでもいたのです。

デニム・ブルーママン22の2

 

山を降りたあと…僕の家に寄ってもらえんかと思ってるんだけど…彼の顔は蒸気機関車のようにまるで湯気が出そうで、私は困ってしまいます。ミチは何も事前に私には伝えてはいなくて、私はやぶから棒に対峙をしていました。私が最も恐れたのは、古い因習を、まだ丸呑みしている人々です。田舎にはまだ残っているはず…この男性もそうなのでは?まだ、そういう人々は日本には沢山いることを私は熟知し、危惧していました。日本は降伏してゼロになったはずなのに、また、威張りたい男子が筍のように顔を出していることは許せない現実でした。民主主義を根本に日本はギアを入れ替えてしかるべきでした。

デニム・ブルーママン21の21

 結婚して苦労するのは目に見えていました。なぜなら、みずからに妥協の栞を入れないといけない。背が高く、弁論が闊達でなければ…しかし、ミチがいなくなって、この男性はおしゃべりであることが判明してきます。私は、のべつ間もなく話すタイプは大嫌い…しかし、山登りを終えたらふたりは別れる。そこまで悩む必要はないと決め込み山登りに息を吐きます。途中茶店がある一休み出来る場所に来て相手をまじまじと見つめてまたがっくりきます。頭髪が後退している。これは先行き禿げるのは見て取れました。足は疲れて来るし、相手は話すことを止めない。私は、ミチの真意を計りかねました。一体全体なぜ?お兄さんを、私に差し向けたの?疑問符すら湧いて来ていました。

デニム・ブルーママン21の20

 バス停に着き私は、上背の高い男性を探します。どこにも見当たらない。ひょっと後ろを見たらミチが前に出て来て、男性を紹介しました。人の良さそうな男性を見て私は、まさかの坂を登っていました。あ、あ、そう言いかけて、男性は、尻込みしました。ミチは果敢にも、兄は、あなたに会えてとても興奮してるみたい…私より9歳上になります…と。速く挨拶して…と男性に、促しています。こ、こんな、べっぴんさんに会えるなんて、ゆ、夢のようです♪おべんちゃらが言えない自分とのコントラストを抱きました。私は、登山だけを済ませてさっさか帰ろうと思っていたのです。男性はミチより背が低い。負の決定打でした。

デニム・ブルーママン21の19

 蛍茶屋まで電車で行き、バスを待ちました。まっ暗なトンネルを過ぎたらそこには東長崎は開けている…私には実際、自信のなさから来る迷いはありました。教員を続行する意志はあっても、本当に自分の子供を育むことは出来るのか?仲間教師たちのにぎやかな子育ての話に触発はされても、事実は未知数です。私には男性が本来は持っていれば役に立つ処世術はあったものの矢面で、それを、いかんなく発揮している女性をまだ見てはいなかったのです。

デニムブルー・ママン21の18

 

今、みんなが、平成、昭和、大正を思うように、私も、大正、明治、その前…江戸時代まで遡り鑑みる必要がはあったのです。ミチのお母さんは明治22年生まれと聞いて、私は咄嗟に、江戸時代と被ることに愕然とします。江戸ならまだ、幸先は良かったのに、明治維新は日本の軍国主義に拍車を掛けました。止まらない戦車です。しかし戦後は、民主主義を執り、平和な日本になりつつありました。ミチは矢上のバス停でお兄さんとベンチに座り待っている約束です。バスに揺られながら私は、踵を返すことも、頭には描きました。途中下車して逃げることは出来たのです。