デニム・ブルーママン21の5

 

私は敗戦後、みんなが豹変し、自分しか見えなくなりさほど、私達には気を遣わなくなり、ホッとしていました。皆が気を遣い、私達の家族を褒めちぎるとき、違和感がありました。確かに海軍に誇りを見出して父は青雲の志を抱いて職務をまっとうしたけど、私はある悪夢に苛まれていたのです。汗を一杯にかいた父に急かされ、起きてみると、自分は別れを言いに来た…と話して、私の妻をこれから頼む…と父にお願いされるのです。夢とは分かっているものの、私には父が三途の川を渡り切れずに霊が戻って来たことを感じたのです。父の死は報じられ、船は沈んでも、遺体がないことで、私は不可思議な思いに包まれたのです。